研究概要 |
(1) CeB_6は強四極子秩序を示すことで盛んに研究されてきた。その奇妙な物性の起源が反強四極子,反強八極子,反強磁性交換相互作用の共存・競合にあることが分かっているが,そのミクロな機構については,まだ十分解明されているとは言えない。共鳴X線散乱により直接反強八極子モーメントを観測することに成功し,ミクロな機構解明の第一歩を踏み出すことができた。 (2) CeB_6にLaを添加すると,IV相という奇妙な秩序相が出現することが知られており,Γ5u-型の反強八極子秩序であるとされている。これに対し,Ce_0.5La_0.5B_6のLaをPr, Ndで置換するとIV相転移温度が上昇することを見出した。これはIV相秩序変数がPr,Ndの磁気モーメントと結合することを示しており,Γ5u-型反強八極子秩序とは相容れない結果であり,今後Pr, Nd置換系サンプルについて中性子散乱,共鳴X線散乱を行い,ミクロな構造を明らかにする。 (3) NdB_6は結晶場と四極子相互作用の競合する系であり,比熱,磁化,磁気抵抗の詳細な研究から,その競合の機構を明らかにした。 (4) T_0=27Kで奇妙な相転移を起こすCeRu_2Al_10について,La置換系,強磁場での比熱,磁化,熱膨張,電気抵抗を詳細に調べ,T_0以下で一重項基底状態が実現していることを提案した。これは稀土類化合物としては,一重項基底状態をもつ長距離秩序を示す初めての例であり,3d化合物と異なり,軌道自由度をもつ一重項基底状態が引き起こすと予想される新奇物性の宝庫となると期待される。
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