研究概要 |
平成23年度(最終年度)の主な研究成果を以下にまとめる。 ○超流動ヘリウム3B相における表面奇周波数状態の研究 超流動ヘリウム3B相の表面近傍に形成される、奇周波数クーパー対とアンドレーエフ束縛状態に関する理論解析を行った。アンドレーエフ束縛状態のゼロモードと奇周波数クーパー対振幅の間に厳密に成り立つ関係があることを指摘し、この関係を準古典的グリーン関数理論に基づく数値計算によって確認するとともに、ゼロモードと奇周波数状態の関係という新たな視点から従来の実験データを再検討し、超流動ヘリウム3B相の表面に奇周波数クーパー対が実際に形成されていることを明らかにした[Phys.Rev.B85,024524(2012)]。 ○超流動ヘリウム3A相、及び、カイラルp波状態における自発質量流の解析 円筒容器中に閉じ込められた超流動ヘリウム3A相では、Mermin-Hoテクスチャーと呼ばれる特殊な渦構造が実現する。この状態は、従来、GL理論の範囲内で議論されてきた。本研究では、準古典的グリーン関数法を駆使し、自己無同着なテクスチャー構造とそれに付随する自発質量流を絶対零度まで数値計算することに成功した。また、Sr_2RuO_4を舞台に議論されているカイラルp波状態の表面に誘起される自発質量流についても詳細な数値計算を行い、表面の散漫的な準粒子散乱が質量流を減少させること、表面付近でのギャップ関数の空間構造や表面状態密度に超流動ヘリウム3の(A相ではなく)B相と類似性があることなどを明らかにした[J.Phys.Soc.Jpn.80 113706(2011)]。
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