本計画以前に、PrRu_4P_<12>において、結晶場準位を一重項と三重項のみに限った場合、その現実的なモデルが、遍歴多体系の基礎モデルの一つであるFalicov-Kimballモデルの拡張版にマップできることが分かっていた。この種のモデルでは、f自由度を古典変数に置き換えることができるため、多体効果のより厳密な評価が可能になることが知られている。 本年度は、この系に関して、動的平均場理論による解析を進め、電荷秩序相における電気抵抗、光学伝道度、ホール伝導度などの輸送特性の計算を行った。一重項-三重項の結晶場分裂の大きさに応じて、特徴的な温度変化が導かれることを示した。特に、電荷秩序に伴う粒子正孔対称の破れを反映して、ホール伝導度が転移温度以下で急激な増大を示すことや温度軸上での符号変化が起こりうることなどを明らかにし、それらが最近の実験結果をよく説明することを示した。 また、上記の現象論的解析の基礎となる有効ハミルトニアンに関して、jj結合近似によるミクロな導出を行った。電荷秩序によって、ごく自然に、一重項、三重項が2副格子の結晶場基底となること、そのとき磁気転移温度が電荷転移温度に比べて3桁も小さくなることなどを示した。
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