ポリマー超伝導の探索として、抵抗が低温で落ちる傾向のある物質に超高圧をかけて物性をみるという戦略で研究を進めた。 以前、石黒らが報告したPPyPF_6における低温での抵抗の減少が、さらなる圧力印加によってどのように変化するか、キュービックアンビル加圧装置を用いて8GPaまでの加圧下で電気抵抗率測定を行った。(PPy : polypyrrole、PF6はdopant。)測定は直流4端子法を用い、0.7×0.2×0.01mm^3程度の大きさの試料へ直径20μmの金線をカーボンペーストにより端子付けし、Daphne7373と共にテフロンカプセルへ封入後、パイロフィライト製ガスケットにセット後、加圧を行った。室温における抵抗率は圧力の印加により抵抗率は減少していくが、6.5GPa程度からは増大し始めることが明らかになった。 キュービックアンビル装置各圧力下での抵抗率の温度依存性測定によると測定全温度領域で絶縁体的温度依存性を示し、室温から温度の低下とともに抵抗は増大を続ける。石黒らの報告にあった低温での抵抗率の減少は見られず、原因として試料の劣化等が考えられるが、現時点では詳細は不明である。キュービックアンビル装置による静水圧力の加圧では温度依存性における本質的な変化は起きず、PPyPF_6の電子状態を変化させることはできなかった。しかし、室温での抵抗率は加圧によって減少しており、何らの影響も及ぼさなかった訳ではなく、導電性ポリマーにおいても結晶性有機導体と同様に、電子状態を圧力によって制御できる可能性は存在すると考えられる。 引き続いて、次に山本より提供された試料P3HexTh+In^-について測定を行った。この試料は、室温での抵抗が10^6Ω程度と非常に大きく、温度依存性測定が困難であったため、ドーピング前の試料へよう素ドーピングを当研究室で試みている。
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