研究概要 |
ウランカルコゲナイドは共有結合性が強く、f電子は局在的な振る舞いを示すと考えられる。斜方晶のジカルコゲナイドUSX(X = S, Se, Te)では原子番号が大きくなるにしたがい、半導体から金属まで伝導度が変化し、これに伴い磁性も常磁性から強磁性に変化する。このなかでβ-US2は低温において狭いギャップを持つ半導体であるが、そのギャップは磁場や圧力などに非常に敏感であり、7T程度の磁場や8GPa程度の圧力で6桁以上も電気抵抗が減少し、金属的な振る舞いを示す。磁場印加における大きな磁気抵抗効果は、容易軸方向[001]に磁場をかけたときのみ顕著に観測され、困難軸[100]方向ではほとんどみられず、異方性が大きい。 我々はβ-US2単結晶の磁場下での容易軸方向[001]の詳細な磁化率測定を行い、その磁気的性質を明らかにした。この物質の磁化は一般的には結晶場効果による一重項状態の形成によるものと解釈できる。しかし、50 K以下のある限られた磁場と温度範囲では、磁化が磁場に大きく依存した特異なスケーリング則に従うことを見出した。これは単純な結晶場効果では説明できない。我々はこの振る舞いを常磁性的な磁気クラスターによるものとする、いわゆる磁気的なポーラロンモデルで説明できる可能性があることを示した。さらに詳細な研究が必要であるが、この結果はこの物質の巨大磁気抵抗とも関連しており、その意味でも重要な成果である。
|