研究概要 |
自然界には力学的要素が非一様に相互作用しているシステムが多く存在する.例えば,細胞内における生化学反応や代謝反応では多数の機能分子が関与しており複雑な応答特性を持っている.これらは,環境変化やノイズに対して安定に機能するよう進化してきたと考えられる.本研究は,機能的安定性をもつ相互作用網(ネットワーク)の設計原理とそれらネットワークがもつ普遍的構造の解明を目的とし,本年度は以下の課題を遂行した. 同期特性の優れた位相振動子ネットワークのデザインを中心に研究を行った.このモデルは力学的要素がネットワーク的に相互作用した集団(個体群)と見なせるため,細胞内での生化学反応や代謝反応などの複雑なシステムの最も抽象化したモデルと考えられる.マルコフ連鎖モンテカルロ法により同期特性の優れた機能的ネットワークが具体的に設計し,ネットワーク構造の統計的特徴付けを行った.これにより,異なる自然振動数を持つ振動子間では同期最適なネットワーク構造が結合リンク数により転移することが解った.結合リンク数が少ない場合は,振動数が隣接する振動子間の結合が優位であるが,結合リンク数の増加に伴い振動数の大きく異なる振動子間の結合が優位となる.これらの成果はPhys.Rev.Eなどに掲載された.また,外部ノイズに対して耐性のある最適なネットワーク構造の解析をすすめ,これらの結果は現在これらの成果は投稿準備中である. 現段階では比較的単純な機能特性を持つネットワークの設計であるが,動的な力学要素の相互作用し自己組織的に機能を発現するシステムの設計は生体反応,代謝反応,流通など様々な複雑ネットワーク設計の指針を与え,その応用範囲は多岐に渡り意義は大きいと考える.
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