量子スピンホール効果を特徴付ける新しいトポロジカル不変量であるZ2不変量の研究、特に時間反転対称性の果たす役割の解明が当初の目的であった。研究開始後、量子スピンホール効果は、トポロジカル絶縁体・超伝導体へと一般化され、更にそれらは10のユニバーサリティ・クラスに分類された。 このような発展を鑑みて、本研究においてもより一般的なトポロジカル絶縁体・超伝導体の研究に取り組むことになった。最初は、中性子星などで実現していると期待されるクォーク物質の超伝導状態の研究を行った。これもユニバーサリティ・クラスとしては、トポロジカル超伝導体に属す。この超伝導状態には実に興味深いカラー・フレーバー固定相があり、この相では非可換渦糸というエキゾチックな渦糸状態が期待されている。この渦糸に現れうるゼロ・モードの詳細な研究を行った。微分方程式を詳細に検討して、ゼロモードの波動関数の性質を調べることによって、バルクのトポロジカルな性質がゼロ・モードにどのように反映するかを調べた。 また、一般的・任意の次元の超伝導体に点欠陥が存在する場合に現れうるゼロ・モード解を求めることによって、Teo-Kaneらの提案したベリーの位相による指数の計算が正しいかを検証した。 更に、正方格子上のマヨラナ・フェルミオン模型を提案し、その詳細を調べた。この模型は、クラスDというトポロジカル超伝導体と同じクラスに属するフェルミオン模型である。特にこの模型に許されるZ2渦糸という特殊な渦糸と、バルクを特徴付けるチャーン数の関係を明らかにした。また、数値計算により複数のZ2渦糸が存在する場合のゼロ・エネルギー状態が、どのように特徴付けられるかを詳細に検討した。
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