本年度は研究課題に直結するテーマとして摩擦のある粉体のジャミング転移、せん断粉体流の弱非線形解析、それから粉体粒子の蠕動による運動における相転移の論文を刊行した。最初のものは、摩擦の存在によって見かけ上ジャミング転移の臨界点が幾つもあるように見える中で真の臨界点を同定し、更に摩擦の効果によって履歴依存性がある事を明らかにした。次の論文はジャミングより若干薄めの粉体流で疎密不安定が生じた後のパターン解析のために弱非線形解析を行い、時間に依存するギンツブルク・ランダウ方程式を導出し、不安定性の分岐が平均密度によって超臨界分岐から亜臨界分岐に変わる事を示した。最後のものは腸のような流路に閉じ込められた粉体を蠕動によって動かした際の流動に関わるジャミングと類似の相転移現象の存在を示したものである。 また、一見研究課題と直接関係なさそうなテーマで次の2論文の刊行を行った。一つは非平衡格子ガス系においてエントロピー生成率が一般に履歴依存性を持つ事を示した論文であり、そこで使った枠組はそのまま粉体系にも適用可能であると思われる。またもう一つは、粉体等でよく現れる非ガウスノイズを特徴づける新しい確率解析の提案と、その確率的エネルギー論の展開である。最後のものは現在PRLで印刷中である。 本年度は本研究計画の最終年ということもあって、多数の海外出張を行い、多数の招待講演及びセミナー発表を行うと共に海外の3つの国際会議の組織委員も務めた。その意味で研究成果発表が世界的に受け容れられると同時に研究者コミュニティへの貢献も大きかった一年とまとめられるだろう。
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