定常剛体回転流は、軸対称性と並進対称性のおかげで中立安定であるが、対称性を破る摂動を加えると不安定化する。楕円形にひずんだ流線をもつ回転流の線形不安定性は縮退する2個のケルヴィン波同士のパラメータ共鳴として普遍的にとらえることができる。これらは、Kreinによるハミルトニアン力学系の分岐理論の枠組みで記述できるが、弱非線形段階を取り扱う理論は未整備であった。従来のオイラー的記述の枠組みではケルヴィン波の自己相互作用によって誘導される平均流を直接計算することができず、未定パラメータが残されたままであること、この結果、撹乱振幅の弱非線形連立常微分方程式系の係数を完全には決定できていないこと、そして、その解の振る舞いが数学的に矛盾することを指摘した。最近、われわれは、ラグランジュ変位を基本変数にとって撹乱を等循環面(iso-vortical sheet)に拘束することによって、撹乱振幅について2次オーダーの平均流を計算する方法を与えた。さらにこれを高次に進めて、撹乱振幅について3次までの振幅方程式の係数をすべて決定する弱非線形安定性理論の新しい枠組みを構築した。振幅方程式がハミルトンの標準形の形で得られる。断面が楕円形の筒状容器内の定常回転流に対して、左・右巻き定常らせん波同士の共鳴によるハミルトン的ピッチフォーク分岐を詳しく調べた。 軸対称渦輪の低レイノルズ数での運動においては、渦度分布はストークス方程式から定まるが、渦核の形がほぼ円形のガウス型渦度分布で、実験や数値計算と合わない。進行方向に長軸をもつ楕円形の渦度分布に変形し、これをHelmholtz-Lambの公式に代入して、低レイノルズ数での渦輪の運動速度の時間変化を計算した。レイノルズ数1400での数値計算の結果とよく合う。
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