カオスに関する研究の一分野に、系の状態をカオスから秩序状態へと近づける「カオス制御」があり、フィードバック制御などの手法が確立されている。近年、これを大自由度系の時空カオス制御へ拡張する試みが始まっているが、実験研究関してはまだほとんど行われていない。そこで本研究は、液晶電気対流系で現れる時空カオスに対して、制御手法の確立と制御機構の解明を中心的な目的としている。特に、時空間欠性に対するパラメトリック摂動による時空カオス制御の機構解明と、欠陥乱流、グリッドパターン、ソフトモード乱流など、液晶電気対流の示す多様な時空カオスに対しても制御を試み、より普遍的な制御手法の確立を目指す。 まず、時空間欠性の乱流ドメインの統計的性質を調べるために、観測領域のサイズ効果の影響をなくすために系全体を観察できるように改良したサンプルセルを用いて、乱流領域の分布関数を調べた。その分布関数がGauss分布を示すことがわかった。 また、時空カオスの性質をラグランジュ的観点から明らかにするために、系に混入した粒子の非熱的Brown運動の観測を行った。欠陥乱流については、ホッピングによる拡散が見られ、拡散係数の制御パラメータ依存性から、活性化エネルギーを見積もった。欠陥格子では、パラメトリック摂動によって、対流ロールと平行な方向の粒子に一様なドリフトが見出された。 その他、次年度以降の研究の準備として、磁場によるパラメトリック摂動、欠陥格子の低周波振動の付近のノイズ印加のためのシステムを確立した。また、時空カオス制御に伴うパターン揺動の性質の変化を調べるための、空間フーリエ係数モードの時間相関関数を求める手法を確立した。
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