研究課題
近年、系の状態をカオスから秩序状態へと近づける「カオス制御」を、大自由度系の時空カオス制御へ拡張する試みが始まっているが、実験研究関してはまだほとんど行われていない。そこで本研究は、液晶電気対流系で現れる時空カオスに対して、制御手法の確立と制御機構の解明を中心的な目的としている。特に、時空間欠性に対するパラメトリック摂動による時空カオス制御の機構解明と、欠陥乱流、グリッドパターン、ソフトモード乱流など、液晶電気対流の示す多様な時空カオスに対しても制御を試み、より普遍的な制御手法の確立を目指す。今年度は、ソフトモード乱流に対して磁場を印加することによってパターンが秩序化する制御過程について研究を行った。ソフトモード乱流は、南部-ゴールドストーン・モードとして振る舞う液晶配向が対流と相互作用することによって生じる。液晶が正の磁化率異方性をもつので、磁場を印加することによって南部-ゴールドストーン・モードを抑えることができる。その結果、ソフトモード乱流は制御される。ソフトモード乱流の制御は「パターン秩序度」とよばれる秩序変数によって定量的に測定された。実験の結果、完全な制御まで数1000秒という非常に長い時間を要すること、制御過程が3領域に分けられることがわかった。また、その過程に「ブラックライン」とよばれる液晶配向の線状欠陥の存在が大きく関与しており、第1の領域ではブラックラインの線密度が急激に増加し、第2、第3の領域では徐々に減少していくことがわかった。
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