樹枝状形態がフラクタル性を示し、擬2次元系ではその次元が約1.5と報告されている。我々は、そのフラクタル性のみならず、界面速度を確率測度とした場合のマルチフラクタル性に関しても以下の方法で解析した。 実験から得られた樹枝状形態の画像からマルチフラクタル解析を行う場合、速度が非常に小さい界面では精度が悪いため各界面の速度を求めるのは困難である。そのため、画像をラプラス場の中におき、境界条件として各界面に曲率と異方性を考慮したスティフネスを導入して、計算機で数値的に各界面の界面速度を求めてマルチスペクトルを求めた。 その結果、パターンのフラクタル次元を示すスペクトルのピークは約1.2で、この値は実験で得られた画像の界面が示すフラクタル次元と一致した。一方、情報次元は約1.0となった。この値は、2次元DLA(拡散律速凝集体)の情報次元が正確に1.0となることが理論的に証明されていることと比較すると、異方性を導入しても情報次元が不変であることを意味する。一般的に、樹枝状形態とDLAは異方性の強さが有限値かどうかで形態的に分かれるが、我々の結果は、マルチスペクトルにおいては形態が異なっても(異方性の強さなどの境界条件に依存しないで)、情報次元の普遍性が拡散場(ラプラス場)の性質だけに依存していることを示している。 一方、本年度のこれらの解析結果では、q値が大きいところの指数を求める場合、依然として、解析精度に難点があると思われる。そのため、次年度も高精度の解析を行うため、継続的にこの課題を追究する予定である。
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