本研究では、新しいモンテカルロアルゴリズムを用いて、これまで困難とされてきたランダム系、フラストレート系、非平衡定常状態転移などの問題に取組むと共に、さらに有効なモンテカルロアルゴリズムを開発することを目的とした。また、同時に画像処理の問題への展開をはかる。今年度の主な研究成果を示す。 1.モンテカルロ法の画像処理問題への応用: 昨年度、Mumford-Shahエネルギー汎関数による画像領域分割問題について、モンテカルロ法とグラフカット法を組み合わせたハイブリッド法を提案した。すなわち、モンテカルロ法により求めた解をグラフカット法の初期条件として用いる方法で、画像によらず、計算時間も短く、大域的な最小値に近づくことを示した。昨年度は2次元画像を対象としたが、今年度は3次元画像に拡張し、その有効性を示した。 2.モンテカルロ法のGPUによる計算の高速化: 近年、graphic processing unit (GPU) を高速計算に応用することが試みられ、モンテカルロ法への適用もなされるようになった。クラスターフリップアルゴリズムのモンテカルロ法の場合には、これまでGPUによる並列計算は難しいとされてきたが、昨年度、並列計算用のクラスターラベリングアルゴリズムを用いてGPU計算を実現した。今年度は複数のGPUを使った大規模なクラスターアルゴリズム・モンテカルロシミュレーションのプログラム改良を行い、さらに具体的な問題として2次元XYモデルを取り上げた。東工大学術国際情報センターのTSUBAME2.0のシステムを用いて、65536x65536という非常に大きいサイズの計算を実行し、従来問題とされてきた対数補正の指数を精度よく決定できた。
|