研究概要 |
1.1-パラメータ族であるsquared Bessel過程に非衝突条件を課した長距離相互作用系の時空相関関数を,粒子数が有限の場合には任意の初期配置に対して決定した。時空相関関数はEynard-Mehta型の行列式で表されるが,その相関核を整関数の理論を応用して解析することにより,無限粒子極限が得られるための条件を明らかにした。応用として,緩和現象を示す無限粒子系を構成した。 2.1次元上の非衝突ブラウン運動に対して複素ブラウン運動表示という新しい表現を与えた。 この表示から,これまでは直交多項式を用いて導出していたEynard-Mehta型の行列式相関関数が直接的に導かれる。また,この表示を用いることにより,tightnessが容易に証明できる。 3.複素平面上の多数の複素ブラウン運動に対して,それらの経路のループ除去部分が互いに非交叉であるという条件を課した系を構成した。その上で,経路が存在できる複素平面上の領域を分割し,経路がそれぞれの領域に始めて入る点が,複素平面上の行列式点過程になっていることを証明した。特記すべきことは,その相関核はこれまでは1+1次元での非衝突拡散過程に対して与えられていたEynard-Mehta型の非対称なものであることである。この系は共形不変であり相関核は共形共変性を持つ。SLE(2)との関係も議論した。 4.非衝突拡散過程は上述のように,任意の固定された初期配置に対して,(任意の時空相関関数が行列式で与えられる)行列式過程である。初期配置を一つに固定せずに,ランダム行列の固有値分布に従って分布させると,この過程は,全ての粒子が原点にあるという特別な初期配置から出発した過程の時間シフトに等しいことが証明できた。この等価性は非自明であり,この関係から,ランダム行列の特性多項式の統計的な性質が導かれる。
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