研究課題/領域番号 |
21540397
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
香取 眞理 中央大学, 理工学部, 教授 (60202016)
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キーワード | ブラウン運動 / 行列式過程 / ランダム行列 / マルコフ性 / 非対称単純排除過程 / 量子戸田格子 / パフ形式過程 / 相関関数 |
研究概要 |
1.2次元平面上のブラウン運動に対して、そのループ部分を除去した経路が互いに非交叉であるという条件を課した系を研究した。Fominの行列式理論を応用して定式化した結果、この系が行列式点過程であることが証明できた。特に、その相関核がEynard-Mehta型であることを導き、この系の共形変換共変性を調べた。 2.ランダム行列に関係する相関核である拡張sine核、Airy核、Bessel核を持つ行列式過程を詳しく研究した。特に、無限粒子系において、それらがマルコフ性を保持することを証明した。これらの系は粒子間距離に反比例した強さを持つ長距離斥力相互作用を持つ系であり、無限粒子極限でのマルコフ性は非自明である。 3.円周上の離散時間完全非対称単純排除過程の速度相関関数の構造を完全に決定することに成功した。 速度相関関数は一般にガウスの超幾何関数を使って表すことができることを示した。また、その結果を用いて無限粒子極限を議論した。 4.量子戸田格子と関係する確率過程であるO'Connell過程を、非衝突ブラウン運動の一般化として定式化した。この多粒子確率過程は、松本とYorによって研究された1次元拡散過程の多粒子拡張であり、また、O'Connell過程のトロピカル極限としてDysonの固有値過程が得られることを、Whittaker関数という多変数特殊関数の性質を利用して示した。 5.直交対称性を持つ初期分布からスタートした行列式過程はパフ形式過程で表されることを証明した。行列式過程とパフ形式過程は、これまではプロセスの時間的な斉次性の違いと思われていたが、初期分布の対称性の違いで説明した点が新しい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた非衝突拡散過程とランダム行列理論との関係に関する研究は、量子戸田格子と関係する確率過程の理論に一般化することができ、研究成果をあげることができた。他方、確率的レブナー発展(SLE)についての研究は、べき行列法による定式化が出来たが、さらに研究を深める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
量子戸田格子と関係する確率過程の研究をさらに発展させる。この確率過程は、Whittaker関数とよばれる多変数特殊関数と関連が深いが、この多変数関数はMacdonald関数という多変数直交関数系の特殊な場合であり、さらに深く研究する必要がある。また、Dunkl過程という確率過程についても研究してきたが、これとの関係も研究したい。確率的レブナー発展(SLE)に対しては、べき行列法による定式化を発展させて、新しい知見が得られるよう努力する。
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