研究課題
固体(絶縁体)の熱伝導機構を解明するため、固体アルゴンを対象として原子の運動をとらえられる分子動力学法を用いて数値シミュレーションを実施した。従来の熱伝導理論では、調和格子振動に基づくフォノンとその摂動として相互作用を担う非調和格子振動からなるモデルを用い、最終的には結晶を連続体と仮定して熱伝導率を計算する。そのため特に高周波の原子振動の効果が抜け落ちてしまう。一方分子動力学法では経験ポテンシャルが妥当であれば基本的に全ての周波数領域の原子振動をとらえることが出来るが、現在の計算機の制約により低周波の振動を再現するのが難しいため、従来理論を含めた全周波数領域における描像をとらえるのが困難であった。昨年度から分子動力学法により長時間シミュレーションを行い低温における熱流束自己相関関数をとらえることが出来ていたが、そのパワースペクトルについては明らかではなかった。今年度はこのパワースペクトルでランダムに振動するフォノンに対応して低周波領域が一定になること等、パワースペクトルの全体像が得られた。その結果低温(10K)、0.5THz近傍で原子振動に誘起される局所的エネルギー輸送に対応する共鳴ピークが観測され、そのピークの痕跡は融点近傍まで残ることが明らかになった。また、系の大きさのスペクトルへの影響及び低周波領域の一定のスペクトルとフォノンとの関連を調べるシミュレーションを実施した。更に、今回の結果と固体中の熱パルス伝播との関連を調べる手法を検討した。
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Non-equilibrium Statistical Physics Today, AIP Conference Proceedings of the 11^<th> Granada Seminar on Computational and Statistical Physics
ページ: 221-222