研究課題/領域番号 |
21540406
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
戸嶋 信幸 筑波大学, 数理物質系, 教授 (10134488)
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研究分担者 |
トン ンョウミン 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (80422210)
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キーワード | 因果律 / 短パルス強レーザー / 散乱理論 / 反陽子捕獲 / CEP |
研究概要 |
フェント秒レーザーと極紫外の共存場による原子は極紫外光子のエネルギーが電離エネルギーより低い場合でも多光子吸収によって電離が可能である。しかし極紫外場を二重にすることによって原子がレーザー光に対して完全に透明となることを実験および理論の共同研究により示した。レーザー場中に二原子分子をおきその核軸とレーザー場の偏光方向を変化させると分子の電離確率が大きく変化するが、従来の理論であるADK理論では実験値を説明できない。我々は直接法により方程式を解いて電離確率を求め、実験値と良い一致を得た。この結果、ADK理論が不一致である原因が展開係数が不正確であることによることを突き止めた。希ガス原子のns内殻はオージェ効果によってふさぐことができない。これはもう一個の電子を電離するのに必要なエネルギーが足りないためであるが、赤外レーザーを付加することによって誘発するとができる。我々はこの効果をうまく利用すればこの過程を著しく増大させることが可能であることを示した。数フェント秒の短パルスレーザーを原子にあてて電離する時、キャリアの位相によって光子の進行方向に対する左右の電離確率が大きく変化することを以前我々の研究で示したが、今回はこの過程を利用して、精密な理論計算を実験値を比べることにより、実験に用いられたレーザーの位相を正確に決定できること示した。また、この短パルスレーザの継続時間にも電離確率の非対称性は大きく依存し、理論計算から決定可能であることを示した。反陽子が水素原子によって捕獲される過程の断面積を我々は本研究で開発した新手法によって以前求めたが、用いたV座標系(唯一の近似である)によってかなりのエラーが含まれうることを指摘した論文が出版された。我々はこれに対して厳密なヤコビ座標系を用いて大規模計算を行い、V座標系はこの系に対して十分正確であることを示した。また、指摘した論文中に求められたヘリウムイオンに対する共鳴エネルギーは逆に不正確でエラーを含んでいることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
反陽子捕獲を精密に計算する手段として新手法を開発したが、その後このフォーマリズムがレーザー場中の原子分子の電離に適用可能であることを確認し、最初の計画以上に大きく発展した。また、コロラドの実験グループとの共同研究が実を結んで期待以上の成果をもたらした。
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今後の研究の推進方策 |
着実に研究計画は進んでおり、今後はレーザー場の扱いと反陽子等のエキゾティック原子の過程を並行して更に研究を進める予定である。ヤコビ座標による計算コードを開発したことにより、V座標系が不適切な任意の質量の組み合わせでも計算可能となったため、ミューオン、陽電子等を含んだエキゾティック原子系の計算を始める予定である。レーザー場中の過程に対しては密度汎関数を用いて多電子系の扱いを可能にする。
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