研究概要 |
平成22年度は量子プロセスの感度の解析に関する下記の成果が得られた. 1.弱い量子測定に関して,フィッシャー情報量が弱値の虚部の揺動に等しいことを示すことによって,感度と弱値の関係を明らかにした.オブザーバブルの全揺動は複素弱値の揺動に等しいか,または小さいため,弱い量子測定において観測される弱値の実部の偏差と位相感度の間にはトレードオフの関係がある.本研究によって,このトレードオフを,最終の測定において得られる不確定性の減少を含む不確定性極限との関係において定式化した. 2.位相見積もりが弱値の虚部に基づくことの発見に基づき,複素弱値で表現される測定統計と変換ダイナミクスの関係を解析した.単一出力の弱い測定で観測される量子相関が,出力確率におよぼす変換の影響を予測することを見出した.従って,適切な変換によって得られる異なる出力値の測定の間の特定の相関と関係づけて量子コヒーレンスを説明することができる. 3.短い時間の参照パルスを用いた光子バンチングによる周波数-時間エンタングルメントを評価するこtの可能性を調べ,時間領域トモグラフィーの理論を開発した.この方法により,ダウンコンバージョンで生成される光子対の超短時間での周波数-時間エンタングルメントの評価指標を開発した. 4.多光子場における非線形量子効果の研究のための新しい量子非線形光学理論を開発した. 5.N光子状態の位相感度におよぼす損失の影響に関するさらなる研究の結果は,損失の影響が損失光子数の絶対値によって与えられる位相感度に普遍的な極限をもたらすという,これまでの結論を裏付けた.
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