| 研究概要 |
本研究では,極低温原子気体における双極子相互作用の効果を理論的に明らかにすることを目的としている.今年度は双極性Fermi原子気体の有限温度における熱力学的性質について研究を行った.絶対零度においては双極子相互作用のFock交換項の効果によって運動量分布が非等方的になるという理論的予言がなされている.一方,実験的には極性分子気体の生成には成功しているものの,量子縮退する低温領域までは冷却できていない.そこで,有限温度において双極子相互作用の効果がどの程度表れてくるか定量的に評価することは重要である.そこで本研究では有限温度における一粒子分布関数対して半古典近似を適用し,さらに変分計算を用いることにより,平衡状態における熱力学性質を議論した.相互作用の大きさ,トラップポテンシャルの異方性,温度をそれぞれ変化させた際に実空間・運動量空間でそれぞれ分布の異方性がどのように変化するか詳細に調べた.また,実験において双極子相互作用の効果が観測する可能性について,定量的に議論した.この研究結果は論文にまとめ,Physical Review A誌に投稿し現在査読中である.さらに自由膨張や集団振動などのダイナミクスを議論するために,Fermi気体のBoltzmann方程式に対するモーメント法を開発し,双極子相互作用が無い場合について音波の伝播を議論した.この結果はJournal of Low Temperature Physics誌に掲載された.また,超流動Fermi気体における第二音波の観測可能性についても研究を行った.
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