研究課題/領域番号 |
21540413
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
窪谷 浩人 神奈川大学, 工学部, 教授 (60281143)
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研究分担者 |
戸田 幹人 奈良女子大学, 理学部, 准教授 (70197896)
足立 聡 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (90211698)
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キーワード | 量子情報 / 量子コンピュータ / 量子絡み合い / ランダム行列 / 多変数超幾何関数 |
研究概要 |
以下2点から研究を実施した。 1.量子絡み合いの動的形成のシミュレーション解析 量子動力学がよく調べられているKicked Topを2つ結合させた系をモデルとして量子絡み合いの動的形成の解析を行った。量子状態|Φ>\<12>=ΣA_<ij>(t)|i>〓|j>の動力学は、行列A_<ij>(t)の時間発展と見なすことができ、量子絡み合いの動的形成は、行列A_<ij>(t)のSchmidt固有値d_i(t)の時間発展として観測される。そこで、d_i(t)の時間サンプリングの統計的性質をランダム行列のものと比較を1体分布関数によって行い、ランダム行列の示す統計的普遍性を量子結合系が持つための必要条件を求めることに成功した。さらに、量子絡み合いの統計性を量子カオスのランダム性の定量的な指標とみなす解析を進めた。具体的には、ランダム行列理論からの一体分布関数のずれのL_1ノルムを指標とした。この指標が量子カオス系のパラメータ依存性から、ランダム行列への近づき方の法則性を見つけた。 2.ランダム行列理論の新しい表現形式の構築 行列A_<ij>の数理的モデルとしてのランダム行列理論を構築している。Selberg-Kaneko積分の被積分関数を拡張し、Schmidt固有値d_i(t)の1体分布関数を解析的に得た。さらに、その積分の満たすべき微分方程式系を得た。これにより、微分方程式系の性質から分布関数の性質を調べることを可能とした。この新しく開発されたランダム行列の解析方法は、vandermonde行列式を直交多項式で表現しその直交性を利用し変数の積分を実行する従来の形式に替わるものである。この形式を用いることにより始めて一体分布関数の漸近解を系統的に求めることができた。さらに、最大固有値の分布や2体分布関数の解析表式を形式的に書き下すところまできた。
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