2009年度は以下の実績を挙げた。 1. 引力がある相互から固液の相転移を研究する基礎理論の構築に成功した。剛体球系からの摂動理論で、固相の動径分布関数を良い近似で計算する所に特徴がある。2つの極小を持っているレナードジョーンズガウス系で広い範囲のパラメータで相図を明らかにした。共存密度を計算し、分子動力学シミュレーションで結晶化せずガラス化するのは、固相の共存密度が極端に大きいのが原因であることを明らかにした。 2. DNAの電子移動を計算する基礎論の構築に成功した。塩基間の電子状態の重なりを小さい摂動項と見なさず、環境との相互作用を摂動と見なす所に特徴がある。これにより、逐次的な電子移動も超交換的な電子移動も統一的に取り扱える。具体的な実験系に応用し、実験結果を再現しただけでなく、DNAに修飾した色素への再結合が重要なことを理論的に明らかにした。 3. 大きさの違う剛体球2成分系に大きな別の剛体球を溶かした時に、溶質粒子のまわりの溶媒粒子の分布をHNC-OZ理論を使って明らかにした。溶媒粒子の2成分の混合比や粒径比で特に大きい方の溶媒粒子の分布が激しく変わることが明らかになった。小さい粒子の半径を1としたとき、もう1種類の溶媒粒子が5、溶質粒子を50のとき、ある程度大きい方の溶媒粒子を溶かすとその溶媒粒子は溶質に張り付いて動かなくなる。 4. 3.で計算した溶媒の分布を使って溶質粒子を動かした時に溶媒粒子から受ける抵抗を、これまで開発した理論を使って計算した。全体の粘度が一定であっても溶媒粒子の分布が抵抗に大きな影響をおこすことが明らかになった。また、溶媒粒子が溶質粒子に張り付いて離れなくなるような場合に、これまで開発した理論の問題点が明らかになった。
|