研究課題/領域番号 |
21540422
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
楠本 邦子 (竹本 邦子) 関西医科大学, 医学部, 准教授 (80281509)
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研究分担者 |
木原 裕 関西医科大学, 医学部, 教授 (20049076)
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キーワード | 軟X線顕微鏡 / 炭素の窓 / シアノバクテリア / phormidium tenue / カルボキシソーム / 電子顕微鏡 / 抗体蛍光法 |
研究概要 |
「炭素の窓」エネルギー領域を用い生きた細胞の観察するための基礎的技術の改良と、それらを用いた生体試料観察を行った。 軟X線顕微鏡(XM)低温観察法を確立した。含水試料を簡便に取りつけられる新しい試料セルと専用の低温ステージを開発した。試料の位置安定性の向上のため、冷却法を冷媒(液体窒素)を直接試料に曝露する冷却する方式(直接冷却方式)から、冷媒で冷却したチャンバーを介し試料を冷却する方式(間接冷却方式)に変更した。さらに、霜の形成と冷媒ガスによるX線吸収を改善するため、冷却乾燥酸素ガスで試料槽内を満たすようにした。試料セル内で対流するポリスチレンラテックス球が凍結・停止する現象を、XMによる動的観察で確認した。冷却による放射線損傷の軽減効果は、詳細な像解析より確認することができた。現在、この装置は、様々な試料観察に用いられている。 無処理の微細シアノバクテリアを、炭素の窓を含む様々な波長を用いXMで観察し、機能を保った状態の微細構造について調べた。Phormidium tenueをXMで観察したところ、2.0nmの波長でサブミクロンの細胞内顆粒が確認できた。同定のため、染色・固定・薄片化したP. tenueの透過型電子顕微鏡(TEM)観察とルビスコ抗体を用いた蛍光抗体法を適応し、顆粒はカルボキシソームである可能性を示した。カルボキシソームは炭酸固定を担う細胞内構造物であり、酸素元素の局在も示唆される。XMで酸素のK吸収端(2.28nm)をより長波長で観察したところ顆粒は確認できなかったので酸素元素が顆粒の主要な構成要素であることが確認できた。顆粒の「炭素の窓」での観察を行ったところ、理論上、顆粒は細胞より約20%透過率が高くなるので、2.0nm観察像の反転像が期待される。明瞭な像を得るには至らなかったが、試料による適度なX線吸収および透過は確認することができた。
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