研究課題
平成23年度は、氷核タンパク質(INP)の構造上の特徴およびその不凍タンパク質(AFP)との違いを明らかにするための氷結晶成長実験研究及び分子動力学シミュレーション計算研究を実施し、昨年度までに実施した研究の結果も交えて、INPとAFPの構造上の類似性と相違性の総合的な比較・検討を行った。まず、INPを持つ氷核バクテリアXanthomonas CampestrisとType-3 AFP共存下での氷の結晶成長実験研究を実施した。氷核バクテリアのみの場合、ベーサル面のみがファセット化した薄い円盤結晶が現れる。AFPのみの場合、ピラミッド面に囲まれた多面体結晶が現れる。本研究の実験の結果、両方のタンパク質が共存する場合、ベーサル面ファセットとピラミッド面ファセットの両方に囲まれた六角板状の氷結晶成長形が現れることがわかった。INPとAFPの氷成長形への作用が相殺されることなく両方とも現れることが示されたため、INPの吸着結晶面はAFPの吸着結晶面は互いに異なると考えられる。AFPはピラミッド面のみに選択的に吸着することがわかっている。したがって、INPはベーサル面のみに選択的に吸着したものと考察される。AFPが氷結晶面へ安定吸着する場合、その氷への接触部分は吸着面構造とよくマッチしている。したがって、同様にしてINPの氷接触部分は氷ベーサル面格子とよくマッチする構造を持っていると考察される。次に、INPと類似したアミノ酸配列構造を持つ昆虫Spruce Budworm AFPの氷界面への安定吸着構造を分子動力学(MD)シミュレーション研究により調べた。その結果、昆虫AFPはベーサル面界面だけではなくプリズム面界面にも安定に吸着することが分子レベルで示された。昆虫AFPの氷接触部分はベーサル面にもプリズム面にも比較的マッチするような構造を持っている。したがって、ベーサル面にのみ選択的に吸着するINPは、たとえアミノ酸配列が類似しているとしても、構造は昆虫AFPとは全く同じではないというのが本研究の結論である。
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Polymer Journal
巻: (印刷中)
DOI:10.1038/PJ.2012.13
Physical Chemistry Chemical Physics
巻: Vol.13 ページ: 19936-19942
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