研究概要 |
本研究は,固体地球の不均質構造における地震波動伝播の数理的モデルの構築と,観測される短周期地震波エンベロープの解析に基づく不均質構造の解明を目的とする.今年度の研究成果を以下にまとめる. A.ランダム不均質構造における地震波動伝播の数理的モデルの構築 マルコフ近似法を用いて,ランダム不均質構造における短周期波形のエンベロープの統計的導出に成功した(Emoto et al.2010).ノイズ相互相関関数から不均質構造におけるグリーン関数を導出する方法について,ボルン近似法に基づく証明に成功した(Sato,2009,2010). B.短周期地震波エンベロープの解析に基づく不均質構造の解明 微小地震のS波の拡大現象を解析し不均質構造のスペクトルを推定するインバージョン法を構築し,東北地方の不均質構造を明らかにした(Takahashi et al.2009).多重等方散乱モデルに基づいてHi-netによる地震波形データを解析し,日本全土の散乱減衰と内部減衰の分布図を作成した(Carcole and Sato, 2010).PS変換散乱の多重等方散乱モデルに基づいて浅間山における爆破地震動を解析し,活火山におけるS波の平均自由行程が1kmと短いことを明らかにした.(Yamamoto and Sato, 2010)
|