研究概要 |
本研究は、比較的短時間のうちに繰り返される爆発的噴火に先行する火道内のマグマ上昇を数値モデルで構築し、多様な噴火現象の要因となるマグマ内揮発性物質の挙動を、山体膨脹現象を通じて測定するための基礎的なマグマ上昇モデルを構築することを目的としている。 本年度はマグマ上昇モデルの構築を中心に行った。火道内のマグマの上昇を,マグマ(メルト+ガス(揮発性成分))の質量保存式、全揮発性成分の質量保存式、1次元ポアズイユ流をもとにしたマグマの運動方程式などで表現し、気泡成長は、ガスの状態方程式、およびメルトから気泡への水分子の移流に関する拡散方程式をもとに、表現した。これらの方程式を差分法により数値的に計算し、マグマ上昇過程を明らかにした。さらに上昇するマグマによる火道壁の開口によって生じる山体膨脹を計算した。その結果、メルト中の揮発性成分の濃度が大きくなるほど、気泡成長によるマグマ上昇の駆動力が大きくなり山体の膨張率が増加する,などの重要な関係が定量的に明かとなった。 構築したモデルとの比較を行うため、実際の火山で観測される山体変形データの特徴を調べておくことが必要である。そこで、本年度は、インドネシア国スメル山において、傾斜計による観測を開始した。また、イタリア国フィレンツェ大学のリペペ博士を訪問し、噴火に先行する傾斜データの特徴を検討した。その結果、ストロンボリ火山や諏訪之瀬島火山の傾斜計データは、マグマ上昇の素過程の研究から予測されている、時間の1.5乗に比例した傾斜変動が観測されていることが明かとなった。また桜島やストロンボリでは噴火直前に傾斜変動が加速する共通の特徴も認められることがわかった。
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