研究概要 |
本研究は、比較的短時間のうちに繰り返される爆発的噴火に先行する火道内のマグマ上昇を数値モデルで構築し、多様な噴火現象の要因となるマグマ内揮発性物質の挙動を、山体膨脹現象を通じて測定するための基礎的なマグマ上昇モデルを構築することを目的としている。 繰り返し噴火に伴う山体膨脹現象は火口近傍で観測されることが多いことから、本年度は,山体地形がマグマ上昇による山体膨脹への影響を,有限要素法を用いて調べた.円錐型火山の山頂部にある開口型火道に増圧が生じた場合について調べた結果,山体地形の傾斜角が約30度のとき、山体膨脹量の最大値は2-5倍大きくなること,最大値は2-3割ほど火口に近い位置に現れることが明かとなった.また,マグマが下方から上昇してきた場合,水平構造に比べて,膨脹率が上昇に伴って小さくなる傾向があることがわかった.さらに、カルデラ地形の場合について調べた結果,カルデラのリム付近は標高のため火口からの距離が大きくなり、遠方より膨脹量が小さくなることがあること、マグマ上昇に伴う膨張率の変化は,円錐型とは異なり,水平構造と同じ傾向をもつことがわかった.以上のことは、水平地形を仮定して山体変形のデータを解析すると,推定値に3-5割程度の系統的誤差が生じる可能性があること、言い換えれば、山体地形と開口型火道を考慮することにより,精度の高い圧力源の時空間変化を得ることができることを示している。 さらに、揮発性成分の拡散過程により気泡成長が進行しながちマグマが上昇する場合と、気泡成長がない場合について、気泡内のガスとメルトの体積及び密度変化に着目することにより、マグマ上昇速度を簡単に記述するモデルを提案し、岩手山の火山体膨脹現象を考察した。
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