研究概要 |
本研究は、比較的短時間のうちに繰り返される爆発的噴火に先行する火道内のマグマ上昇を数値モデルで構築し、多様な噴火現象の要因となるマグマ内揮発性物質の挙動を、山体膨張現象を通じて測定するための基礎的なマグマ上昇モデルを構築することを目的としている。 玄武岩質マグマのように低粘性のマグマを有する火山において発生するストロンボリ式噴火のような爆発的噴火は、室内実験とのアナロジーから、火道内を上昇する大気泡により発生するとする考えがある。そこで、低粘性マグマを想定し,大気泡の運動と火道壁に及ぼされる圧力変化を、気泡内のガスの状態方程式、メルトおよびガスの質量保存式などを元にモデル化した。数値計算を行った結果、大気泡は上昇とともに気相体積を増加させる。そのため、上昇開始時にはほぼ一定の速度であるが、大気泡の上部がマグマ最上面に近づくにつれて体積が増大し、上昇速度が加速する。この上昇により、メルトは火道内を押し上げられ、火道上部は増圧する一方、大気泡の位置する部分は減圧が起きる。求められた圧力の時空間変化から山体変形を計算した結果、大気泡が比較的深部にある場倉、山頂方向が上昇を示す山体膨張が起きるものの、比較的浅部に近なると、大気泡付近の火道壁の減圧の影響が現れ、山頂方向が沈降を開始する。 イタリア国ストロンボリ火山で記録されている傾斜データは、噴火直後から次の噴火直前まで山頂方向の上昇を示し、かつ、膨張は噴火直前に加速している。これは大気泡モデルと明らかに一致しておらず、単純な大気泡上昇モデルでは説明できないことが明らかとなった。
|