研究概要 |
近年,大地震に伴って発生した地震音波を観測したという報告がなきれている.そうした地震音波は大気中を伝搬するが,大気中の風の影響を受けて観測点への到着に遅延が生じたり波形が歪んだりする.この影響を調べるのが本研究課題の目的である.21年度は風速場を一様な鉛直勾配を持つ東西風とした場合について,その風速場の音波の伝搬における影響を調べた.風速場を単純にすることにより,結果の解釈が明確になりより,得られた結果は複雑な系の場合の解釈の基礎となる.その目的のために周期100秒以上の1万2千個程の音波モードを風下に進む場合,風上に進む場合,風と直交して准む音波の場合について計算した.計算した結果,固有周波数は風下に向かう場合が高くなりドップラー効果で説明できることが分った.また,音波のターニングポイントは風速勾配の影響を受け,風下に向かう場合は高度が下がり,風上に向かう場合は高度が上がるという結果を得た.これは大気中の風速場によって音波が曲げられる効果で解釈できる.こうして得られた1万2千個の音波モードを重ね合わせて,地震で励超された大気音波の波形計算を行った.得られた結果はモードの場合と同じく,風下にある観測点では音波が早く到着すること,中間圏で曲げられる音波は風速勾配による屈折で説明できることが分かった.こうした結果は宮城内陸地震の際に発生し夷隅観測点で観測された音波と1次元構造モデルで計算した音波波形の違いについて説明できる可能性を示唆する.計算結果とその解釈についてはAGU Fall meetingで報告をした.
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