研究概要 |
コンドリュールは隕石の主要構成要素であり,原始太陽系星雲において惑星よりも先に形成されたと考えられているシリケイト球粒である。いっぽう宇宙塵は,地球大気中での流星現象で形成されるシリケイト球粒である。両者には類似点が多い。どちらも,シリケイト組成の固体粒子が溶融・再固化してできた1mm程度以下の球状粒子である。しかし,相違点もある。本研究では両者を比較しながらコンドリュールの溶融・再固化過程の詳細を明らかにし,もってその形成過程の理解を質的に大きく前進させることを目指す。コンドリュールの形成過程を考える際に,宇宙塵との比較の視点を導入する点が本研究の特徴である。 平成21年度は,宇宙塵の3次元形状についての研究を進めた。宇宙塵には完全に溶融したあと再固化したものがある。この再固化は地球大気内を移動中に起こるため,大気からの動圧の影響を受けて形状が決まると考えられる。私たちの理論モデルでは,どら焼き状のオブレート形状やラグビーボール状のプロレート形状もできることが示されている。しかも,再固化時の温度がわかればその時点で作用している動圧がわかり,変形の度合いも計算できる。 私たちは,1個1個の宇宙塵の3次元形状を計るとともに,それらの化学組成を測定し,融点を求めた。そして求められた融点から固化時の動圧を推定し,動圧による変形量を求めた。さらに,そうして推定された変形量を実際の3次元形状と比較した。その結果,両者は誤差の範囲でよく一致していることがわかった。これは,オブレートの場合もプロレートの場合もあてはまる。すなわち,私たちの摩擦加熱・溶融・変形・固化に関する理論モデルは,実際の宇宙塵形状をよく再現する良いモデルであるということが確認できた。
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