研究概要 |
九州に分布する広域テフラを伴う火砕流の古地磁気強度測定を行ない、海洋堆積物コアの磁化強度変動から計算されている相対古地磁気強度変動曲線の絶対値を得るべく研究を進めている。 前年度までに、阿蘇火砕流の結果から、270万年から90万年までの比較で、相対古地磁気強度のキャリブレーションが適切でなく、大きめに見積もっていることが明らかにできた。本年度は、年代を新しい方に伸ばす目的で船倉火砕流(K-Ahテフラ:7.28ka)入戸火砕流(ATテフラ:29ka)の2火砕流について、また、古い方に伸ばす目的で今市火砕流(Sz-Azテフラ:830ka)耶馬渓火砕流(Sz-Pnkテフラ:1050ka)の古地磁気強度を二回加熱ショー法で決定した。 結果はそれぞれ30.9μT,14.9μT,32.2μT,30.7μTと古地磁気強度が求まり、いずれも、Channell et al.(2009)のPISO-1500相対古地磁気強度変動曲線より、数%から20%程度弱めの値となっていた。これは、古地磁気強度の過大な見積もりが、過去100万年程度はまでは同様に見られることを示している。堆積残留磁化が圧密などで減少することによる効果も考えられたが、不一致の年代による傾向は認められず、火山岩の平均古地磁気強度を用いた過去のキャリブレーションのスキームの不備、または、平均古地磁気強度を求める際に用いたデータベースの大半を占めるテリエ法の問題点を示していると思われる。 阿蘇火砕流の論文について、広域テフラの層位に疑問が出るなどして、予定より多少遅れ、出版には至っていないが、投稿準備はできている。また、本年度の結果も順次公表する予定である。
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