研究概要 |
沖縄トラフ南西部の拡大開始時期と台湾の造山運動開始時期との関連性について、考察を行なった。 沖縄トラフ南西部の拡大開始時期とその際の拡大の携帯については、次の3通りの考え方が提唱されている。 (1)後期中新世(6Ma頃)、ルソン弧の琉球弧への衝突による琉球弧の時計回り回転により、背弧側が拡張した(Miki, et al., 1995 ; Sibuet and Hsu, 1997など)。 (2)後期鮮新世~第四紀初頭(3-2Ma頃)琉球弧の火山リフトの伝播により拡張した(Letouzey and Kimura, 1986など)。 (3)第四紀初頭(2Ma頃)フィリピン海プレートの運動がNNWからWNW方向に変わり、それに伴って島弧胴切り型の右横ずれ断層運動に伴う背弧側のpull-apart運動が起こった(Kong et al, 2000)。 しかし、これらの3説については、競合するものではなく、沖縄トラフ南西部はこれら3段階に亘って拡張を開始したと考えることが出来る。とりわけ(3)の事象によってフィリピン海プレートの運動方向が変化したことについては、ルソン弧の台湾への衝突の原因となることに加えて、琉球海溝南西部での斜交沈み込みによる海溝軸の南方への後退、沖縄トラフの拡張の加速、島弧胴切り断層の成長の加速を引き起こしたものと見られる。石垣島東方沖の海底活断層が成長・伝播していることが本研究に先立つ研究により明らかにされたが、この断層がこの時期に発生したとすると、1万年当たり200mの割合で長くなっており、また1万年当たり1mの割合で垂直変位が増加していることになる。また、台湾の造山運動は1万年当たり20mずつの隆起を起こしていることになる。 以上の結果については、現在のところ整理の上、論文を執筆中である。
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