研究課題/領域番号 |
21540445
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
水田 元太 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 助教 (30301948)
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キーワード | 海洋物理・陸水学 / 地球流体力学 |
研究概要 |
西岸境界流の続流域では強いジェット状の流れが中規模渦や惑星波動による非線形作用によって弱められ、弱い内部領域の流れへと接続されている。前年度までの研究から続流域から放射される惑星波動の強さが内部領域の流れの分布に依存し、惑星波動がジェットと内部領域の流れの接続に寄与することを示唆された。しかしジェット中の不安定擾乱による寄与はないのか、惑星波動はジェットでなく内部領域の側の分布の違いにのみ関与するのかといった点は十分明らかでない。この点を確かめるため本年度はジェットの幅と最大流速を変化させる数値実験を行った。不安定擾乱のためにジェットの東部分ではポテンシャル渦度の南北勾配が小さくなり、内部領域の流れよりも小なくなる。惑星波動は不安定擾乱によって小さくなり過ぎたポテンシャル渦位の勾配を内部領域と同じ値まで強める。ジェットの流量を一定に保ったまま最大流速を小さくすると、ジェットの不安定が弱まることに対応してジェットの東部分でのポテンシャル渦度勾配の減少の仕方が弱まる。このとき内部領域とのポテンシャル渦度勾配の差は縮まり、同時に続流から放射される惑星波動も弱まることが示された。このことは上流側のジェットの条件の違いに対しても不安定擾乱だけでなく惑星波動が整合的に変化することでジェットと内部領域がうまく接続されることを意味する。この系の擾乱成分のエネルギーのうちジェットの流軸近傍で粘性によって散逸される量と惑星波動によってジェットの外へ放射される量はほぼ等しい。これは地衡流乱流においてエネルギーが大きなスケールの運動へカスケードすることと矛盾しない。このことから続流域の循環の維持にジェット中の不安定擾乱だけでなく、惑星波動が寄与するのは自然なことである様に見える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
惑星波動が関与するのは内部領域の流れなのか、内部領域とジェットの差なのかという問題について答えを得るなど、西岸境界流の続流域の力学は奥深いものがあるが、それついての理解が一歩ずつ着実に進んでおり、概ね順調に進捗していると考える。上に述べた結果はJouranl of Phyisical Oceanographyに掲載されている。
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今後の研究の推進方策 |
エネルギー収支解析によると擾乱の散逸には水平粘性項や海底摩擦項だけでなく鉛直粘性項が寄与していた。これは少し意外な結果であり、鉛直粘性係数を小さくした場合に不安定擾乱や惑星波動が強さや平均流との相互作用がどの様に変化するかは興味深く調べる価値がある。感星波動が海底地形上に形成する流れとそのエネルギー収支についても解析に必要な道具立てが揃ったので詳しい研究を進める。
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