今年度は以下の3つの研究を行った。 1.再循環を伴う東向きジェットの内部領域への侵入の力学:西岸境界流の離岸後生じる続流の形成機構およびその長さがどのように決まっているかという問題は未だに明らかではない。ここでは、西岸域に渦位強制を与え、極側に低気圧性・赤道側に高気圧性の構造がどのように内部領域に侵入していくかを理論的・数値的に調べ、プロファイルと侵入速度の関係を求めた。さらに、安定性解析、1.5層、2層の両方で行い、続流構造が存在するための条件や、その長さの決定要因を解釈できる可能性の高い知見を得た。ただし、まだ結論を得るには不十分なところがあるので、22年度にもさらに研究を進める。 2.準地衡流数値モデルの移流スキームの改良:準地衡流モデルの移流スキームには多くの場合Arakawaヤコビアン法が用いられるが、本研究のように、細くて速いジェットを形成するような問題では、そのジェットを正しく表現するためにグリッド間隔をかなり狭くとる必要があり、長時間の計算においては、膨大な計算時間となる。そこで、局所補間微分オペレータ法(IDO法)を適用した新しい準地衡流モデルを開発し、その特性を調べた。22年度には、このモデルを用いて風性循環構造の詳細なパラメータ依存性の計算を行う予定である。 3.海洋大循環モデルにおける早期離岸の計算:プリミティブ方程式の海洋大循環モデルで早期離岸の解を得た。さらに、早期離岸の解と早期離岸が起きていない解、それぞれについて、エネルギー収支、ポテンシャル渦度収支を計算した。これを元に、両者の違いの発生に迫ることを目的としているが、現時点ではまだ、確実な結果は得られていない。
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