研究概要 |
交付申請書に記載した「亜熱帯ジェット気流と亜熱帯収束帯」について次の研究を行った.1.SACZの生成メカニズム:海岸付近にあるブラジル高原の影響について,22年度に得た結果をまとめ,国際学会(IUGG2011)で発表し,学会誌(J.Climate)に論文を刊行した.,2.亜熱帯ジェット気流との関係:計画を変更した.最近,Sampe and Xie(2010)が,亜熱帯ジェット気流に沿う対流圏中層の暖気移流が中層の上昇流を維持し背の高い対流の発生を助けることに注目し,梅雨前線帯の降雨域と亜熱帯ジェットの関係を説明する仮説を発表した.そこで,SPCZとSACZについて対流圏中層の暖気移流と対流活動の関係について調べた.亜熱帯ジェット気流に伴う暖気移流と降水帯,対流圏中層の上昇流の一致が見られ,Sampe and Xieの仮説が南半球の亜熱帯収束帯でも成立することが明らかになった.交付申請書に記載した「亜熱帯収束帯における大気海洋相互作用の役割」について,次の研究を行った.梅雨前線帯は、他の亜熱帯収束帯と比べ高緯度側に位置し、季節進行とともに北上するなど特異な性質を持つが、黒潮/黒潮続流域における大気海洋相互作用がこの性質に寄与している可能性を観測データの解析により示唆した。一般には中緯度域では春から夏にかけて海面水温の南北勾配は緩和されるが、梅雨前線帯では水温勾配がむしろ強化される。これは前線帯の両側での傾圧性を強化し前線帯の維持強化に有利に働く。梅雨前線の北側の昇温が抑制されて水温勾配が維持されるメカニズムを,梅雨前線帯の特徴である下層の強い西風で説明した.西風による海面での風応力の回転は、前線帯の北側で反時計回り、南側で時計回りとなる。このため、前線帯の北側でエクマン湧昇が生じ、梅雨期の海面水温の上昇が抑制される。現地観測からも梅雨前線帯の北側で海水が持ち上げられている可能性が示された。
|