昨年度に引き続き、インド洋の「浅い南北循環セル」の全体像と、それを形成する主要要素の変動過程を詳しく調べた。高解像度海洋大循環モデルであるOFES(Ocean General Circulation Model for the Earth Simulator)の結果や他の観測データ、再解析データ等を解析し、太平洋インド洋域の数十年規模変動の傾向が1993年を境に反転していることを明らかにした。浅い南北循環セルにも関連するインドネシア通過流やLeeuwin海流でも同様の変動が見られることが分かった。また、一連の研究を進めて行く過程で、インド洋熱帯域に見られる季節内の時間スケールでの海盆規模の変動モードが存在していることが明らかとなり、その特性に関して詳細を調べた。これらの成果は、インド洋域の浅い南北循環セルの変動を理解するために不可欠のものであり、今後、さらに広い範囲での全体像を把握するために重要なステップである。 さらに、長期変動の基本的な力学過程を良く現していると考えられる低減重力モデルを用いた実験も継続し、数十年周期で変動する南部インド洋域の風応力変動が主要な励起源であることを確認した。また、赤道を跨いで北半球と南半球を結ぶ大洋規模の南北循環セルの長期変動の解析も進めた。 これらの結果は、インド洋の浅い南北循環セルの変動過程に関する新たな知見を与えるものであり、結果の一部は国際研究集会や国際学術誌で発表した。
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