研究概要 |
気象予報モデルを用いて,爆発的に急発達する低気圧および強大な台風の高分解能数値シミュレーションを行い,東京都心部での強風事例の再現計算を行った。高分解能化することによって詳細な地形を表現することができたため,関東平野の一部に属する東京都心部でも山の手や下町,川筋や起伏など微細な地形の違いに応じて強風の出現特性が異なることを示すことができた。一方,東京都心部の建築構造物等の地表面GISデータを数値流体力学モデルに組み込み,LES広域都市乱流解析モデルを構築した。このLESモデルの入力条件には,気象モデルによる低気圧および台風による強風時の風速計算値を用いた。気象モデルの風速データをLESモデルに入力するためのインターフェースとなる新しい手法を考案した。この新手法により,現実的な気象場で生じた強風による都市キャノピー内部での乱流変動を再現することが可能となった。気象モデルによる風速データを用いたLESモデルによる数値解析では,5km×2kmという広域で20mおよび10mメッシュでの超高分解能シミュレーションを実行した。計算で得られた乱流変動を気象庁により観測された都心部での風速値と比較したところ,平均風速値のみならず瞬間風速値も良好な一致が見られ,限られた事例数ではあるものの,本手法の妥当性を検証することができた。気象モデルとLESモデルを併用した一連の数値解析手法を「融合解析」として,国内外での学会等で発表を行い,論文発表を行った。都市における風環境・風災害・大気汚染の問題が社会の関心を集めている中で,気象モデルと都市乱流モデルとを融合させる手法は,今後ますます必要性が高まるものと考えている。
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