対流圏オゾンは第三位の温室効果ガスであるため、全球的動態の解明が望まれている。特に東アジアでは、近年の急速な経済発展に伴い、オゾン前駆物質の放出量が増加しており、この領域でのオゾン変動は世界的に注目を集めている。最近では、様々な人工衛星センサを用いた対流圏オゾン気柱量データの導出が可能になっている。 本研究では、オゾンとその前駆物質である対流圏微量成分の広域的分布を、都市スケール・領域スケール・地球規模スケールとの関連における役割を明確にしながら解析し、それらの動態解明を行うことを目的としている。これまでに、GOME (Global Ozone Mapping Experiment)センサと、オゾンゾンデで観測された東アジアにおける対流圏オゾンデータを1995年から2003年まで解析した。Hayashida et al.[2008]では帯状に高濃度な対流圏オゾン(Enhanced Tropospheric Column Ozone belt : E-TCO belt)が中緯度で観測され、夏に北上し、冬に南下するという季節変動を示すことを明らかにした。 本年度は、OMI (Ozone Mapping Instrument)とMLS (Microwave Limb Sounder)の組み合わせから得られた対流圏オゾン気柱量データを解析に追加し、期間を延長した。特に、衛星で観測された対流圏オゾン(気柱量)の広域的分布を、亜熱帯ジェットの位置と高濃度ベルトの位置、その季節変動との関連に重点をおいて解析した。その結果、亜熱帯ジェット気流と高濃度ベルトの位置には極めて良い対応があることが見いだされた。連携協力者の永島達也氏の協力を得て、タグ付きトレーサー実験の結果と衛星データの解析結果との比較を行った結果、成層圏オゾン流入の影響と共に対流圏起源オゾンの集中する領域が亜熱帯ジェットの位置と近いため、衛星から観測すると両者が重なって見えることがわかった(Nakatani et al.気象集誌(JMSJ)に論文投稿中)。さらにオゾンゾンデ、MOZAIC(飛行機観測)の高度分布観測データから高度分布を解析することで、オゾンの4次元分布の解析を行っている。
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