研究課題
昨年度までの研究で、北太平洋の亜熱帯域に広く分布する北太平洋中層水(NPIW)に低塩化トレンドが見られることが明らかになり、特に日本東方の親潮・黒潮混合域でそのトレンドが大きく、この海域への黒潮の流入量の長期的な減少が、その原因であることがわかった。また、日本南岸のNPIWの低塩化は、親潮・黒潮混合域内の低塩化した水塊が、この海域に到達するためと考えられる。そこで、昨年度後半より、水塊が到達するまでのルートを明らかにするため、アジョイントモデルを用いて、海水粒子の軌跡に関する解析を開始した。特に、本年度は、アジョイントモデルの計算結果と、通常の移流拡散モデルの計算結果を組み合わせることにより、ある過去の時刻にある海域内を出発し、ある未来の時刻にある特定の海域に到達粒子の軌跡を確率密度分布で算出する方法を開発し、日本南岸のNPIWのうち、10年前に北緯37.5度以北、塩分34.0以下の亜寒帯域にいた水塊の軌跡を解析した。その結果、上記の水塊は、主に、オホーツク海、もしくは、ベーリング海を起源とし、親潮に移流され、クリル諸島、及び、日本の東岸を南下し、その後、黒潮により東へと移流されるが、主に東経160度のシャツキライズ付近で、傾圧不安定に伴い、黒潮の流れから南にそれ、今度は再循環流にのって、日本の南岸まで到達していることがわかった。上記の解析により、低塩分水が、親潮から黒潮を横切りNPIWに到達するルートが明らかになった。また、到達までの時間が10年程度であることから、親潮・黒潮混合域での低塩化の影響が比較的早く(およそ10年程度)、日本の南岸にまで及ぶごとが示された。
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Pure and Applied Geophysics
巻: 169 ページ: 579-594
10.1007/s00024-011-0387-y
Climate Variability-Some Aspects, Challenges and Prospects (InTech, Croatia)
ページ: 75-98