研究課題/領域番号 |
21540458
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
田口 文明 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球シミュレータセンター, 研究員 (80435841)
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研究分担者 |
野中 正見 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, チームリーダー (90358771)
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キーワード | 黒潮・親潮続流 / 十年規模変動 / 海洋前線 / ストームトラック / 海面熱フラックス / 海洋貯熱量 / 高解像度大気海洋結合モデル / 高解像度領域大気モデル |
研究概要 |
黒潮続流域は、北太平洋における数年~十年規模の気候変動の活動中心である。本年度は、この海域の海洋前線と大気の相互作用にとって重要な、以下の2つの素過程について、高/中解像度の大気海洋結合モデル及び高解像度領域大気モデルを用いて調べた。 1.大気の傾圧性の回復と維持 日々の高低気圧擾乱の発達のため必要な大気下層の傾圧性は、個々擾乱による南北熱輸送によって常時緩和されている。従ってストームトラックが維持されるめには、大気下層の傾圧性が維持するメカニズムが必要である。高解像度大気海洋結合モデルの詳細な解析から、海面水温前線を挟んで大きなコントラストを持つ大気海洋間の熱交換によって、擾乱によって緩和された傾圧性は、1日程度の速い時間スケールで回復する実態を明らかにした(Nonaka et al.2009)。さらに、海洋前線によって維持された大気下層の傾圧性が、ストームトラツクの平均場を維持するために不可欠であることを、海面水温前線を平滑化した領域大気モデルの数値実験から示した(Taguchi et al.2009)。 2.海洋前線の十年規模変動と、海洋貯熱量・海面熱フラックス・大気ストームトラック変調との関係 中解像度大気海洋結合モデルの長期積分を延長し、合計120年間積分を得た。モデルで再現された海面水温は、北太平洋亜寒帯前線沿いに顕著な十年規模変動を示し、この変動は海洋前線の南北移動に起因すること、また同期した大気下層傾圧性とストームトラック活動度の変調を伴っていることを確認した。また、海洋上層の貯熱量の変動要因および、その変動と海洋から大気へ放出される熱量との関係の解析から、黒潮・親潮続流域においては海洋変動が能動的に海面での熱放出を変化させうることが明らかとなった。
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