研究概要 |
黒潮続流域の海洋前線と大気の相互作用にとって重要な、以下の3つの素過程について調べた。 1.黒潮続流域の北側再循環の十年規模変動 高解像度海洋循環モデルOFESの解析により、最近発見された黒潮続流域の北側再循環の十年規模変動は、海洋渦活動の変調とその平均流へのフィードバックによって良く説明されることを示した。(Taguchi et al.2010) 2.大気のストームトラックと大規模スケール循環場の応答 観測データ及び海洋前線を解像する大気海洋結合モデル(CFES中解像度版)を用いて、北太平洋亜寒帯前線帯の十年規模海面水温(SST)変動に対する大気応答を調べた。持続的な十年規模SST偏差と相関する大気循環の十年規模ジグナルは、10月頃から出現し1月に最も強いシグナル(ストームトラック変調による平均場へのフィードバックに支えられた等価順圧的なPacific North Americanパターン)となって現れるものの2月に急速に減衰する、顕著な季節性を示すことを明らかにした。(Taguchi et al.2011,in revision)。 3.海洋表層貯熱量と海面水温の変動との関係 海洋から大気へのfeedbackに重要となる、海洋変動が海面熱flux偏差を生じさせる過程を理解するために、海洋水温躍層変動に強く影響される海洋表層貯熱量と海面水温の変動の相関分布から、海洋変動が海面水温偏差に与える影響を調べた。良く知られた赤道域とともに西部北太平洋の海洋前線帯でも海洋変動が海面水温へ影響しうることが確認された。同時に、大気からの直接的な強制の寄与が大きいと考えられていた亜熱帯前線帯においても相対的に弱いながら海洋変動から海面水温への影響が生じうることが示唆された。
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