研究概要 |
高解像度大気海洋結合モデルを用いた熱帯の季節内変動と台風の季節予測の研究を行うため、研究実施計画にあるとおり、今年度は2009年度より稼動開始した地球シミュレータ2上でのモデルのチューニングを中心に行った。まずはじめに、以前の結合モデルに用いられていた海洋モデル部分のバージョンアップを行った。この際、NETCDF IOに問題があることが分かり、修正部分は海洋モデルの開発に反映された。次に地球シミュレータ2上で結合モデルのチューニングを行った。チューニングはモデルの実行速度を向上させるためのコーディングやIOの最適化と、モデルのバイアスを低減するためのモデルパラメータチューニングの2つを主に行った。 以前のES上で行った高解像度モデルの1ヶ月間の積分に要する時間は約5時間であった(使用したCPU数は、カップラー:6、海洋モデル:57、大気モデル:120、計183CPU)。一方、今回ES2上で最適化した高解像度結合モデルの1ヶ月間の積分に要する時間は1時間40分である(使用したCPU数は、カップラー:6、海洋モデル:10、大気モデル:80、計96CPU)。比較したモデルは海洋モデル部分がリプレースされ、使用したCPU数も異なるため、厳密な比較はできないが、約半分のCPU数で積分時間は1/3に短縮されていることから、以前に比較して約6倍の性能向上と言える。 また、モデルのバイアスを低減するためのチューニングとして、海洋モデルに対し,パラメタリゼーションを導入した。以前の結合モデルには太平洋熱帯域における赤道潜流の流速が観測に比較して、1.4倍程度過大評価しており、また、東太平洋における海面水温の低温バイアスが見られる。今回導入したパラメタリゼーションによって、赤道潜流の流速は観測にほぼ近い値になった。また、海面水温の低温バイアスの低減に関しても現在研究が進行中である。
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