研究課題/領域番号 |
21540460
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩上 直幹 東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (30143374)
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キーワード | 地球惑星上層大気 / 金星 |
研究概要 |
平成23年度には金星の観測好機はなかったが、成果の解析・発表が進展した。 平成22年8月に観測成功した金星雲上のHDO混合比の論文はICARUS誌に掲載された。この結果と欧州の金星探査機Venus Express搭載の分光装置SOIRとの間の整合性に疑問が生じたため、院生をSOIRチームの本拠ブラッセルに1か月派遣して情報収集を行い、矛盾はないことを確かめた。この結果は彼の修士論文にまとめられた。 同時に観測したCO_2吸収を利用した大気波動検出はICARUS誌に投稿し、現在は査読者の意見を受けて改稿中。査読者の強い要請に従って、放射輸送・スペクトル解析の手法を改良した結果、高度60km付近における大気波動の姿がさらに明らかになってきた。ここでは、この60kmという高度に意味がある。これまで、大気波動の観測は昼面の紫外光による高度70kmと、夜面の赤外光による高度50kmに限られていた。それらの中間高度にあたる60kmにおける大気波動の検出は、このような波が大きな役割を担っていると予想される大気超回転現象の加速メカニズム解明に貴重な情報をもたらしうる。 また、同じく同時に観測していた雲上方のもや層に関しても、あてにしていた「あかつき」からのデータが数年間入手できなくなったため、これもSOIRからのデータを代用することとし、院生をブラッセルに3か月派遣して情報収集にあたらせた。この結果は4月の欧州地球科学連合大会で発表予定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「あかつき」とのデータ比較検討は周回軌道投入失敗のため不可能となったが、地上観測は(経験を積んだ結果、悪条件を避けることができるようになり)順調にデータ取得・論文化が進行している。また、昨年度より欧州金星探査機Venus Express搭載のSOIR/SPICAV分光計のチームと連携し、データの比較検討を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
「あかつき」のデータは周回軌道再投入が行われる2015年末までは入手できないので、自前の地上観測にVenus Expressのデータを絡めた視点からの研究をさらに展開・発展させていく。
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