酸素原子が放射するOI135。6nm夜間大気光の放射強度は電離層F層の電子密度の二乗にほぼ比例する。静止衛星を利用してOI135。6nm大気光を撮像すれば、電離圏におけるプラズマバブルや伝搬性電離圏擾乱といった電子密度変動現象の全体像を捉えることが可能である。中高緯度でのOI135。6nm大気光の発光強度は10R程度であり、静止軌道から電離圏での水平距離100kmの空間分解能で撮像する場合、露出時間20分で1000カウント得るためには0。075cts/s/R/pixelの感度が必要である。真空紫外シュミット光学系を実現するにあたり、最も技術的に困難な要素は真空紫外光を透過するMgF_2などの結晶材料を基板とした非球面補正板の製作である。まず、MgF_2を補正板材料として用いたシュミット光学系を設計し、MgF_2の精密加工技術を確立するために、磁性流体研磨と高精度ダイレクト研削の二通りの方法で球面を試作した。干渉計を用いて面精度を評価した結果、両者ともに0。5λPV(peak-to-valley)@135。6nm程度の面精度を達成できた。加工時間を考慮すると高精度ダイレクト研削が適することがわかった。次に、フライトモデルのシュミット補正板と同程度の最大傾斜、サグ量と60%の直径(=60mm)を有する小型MgF2シュミット補正板を設計し、高精度ダイレクト研削を用いて試作した。その結果、面精度は0。53λPVとなった。高精度ダイレクト研削を用いて補正板を製作したと仮定して、シュミット光学系全体の性能を評価したところ、要求される空間解像度を十分に満たしていることが確かめられた。本研究の目標とする真空紫外シュミットカメラの非球面補正板を製作する技術は確立できた。最終年度は、前年度までに得られた成果を論文としてまとめて公表した。
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