研究概要 |
本研究は,磁気リコネクション領域で観測される大振幅電場構造がどのように形成されるかを解明し,大振幅電場構造が磁気リコネクションに対してどのような役割を果たしているかを明らかにすることを目的とする.過去2年間の研究計画期間の結果において,高解像度シミュレーションの結果と観測データの比較することで,観測データに現れる大振幅電場は再現されず,数値シミュレーションの空間解像度の問題で大振幅電場が再現できない,という可能性は否定されていたため,研究計画の最終年度では再びデータに戻って詳細解析を行った. 我々は,磁気圏尾部のリコネクション観測例の内,これまでで最も拡散領域の中心部に近づいたと考えられるGeotailの観測データに着目し,リコネクション領域の空間スケールサイズを推定した結果,この観測イベントは,2次元粒子シミュレーションで示されてきた無衝突リコネクションの磁場拡散領域の描像とよく一致することが明らかになった.(Nagai et al.,2011) 更にこの観測例についてプラズマ波動のアクティビティーを調べたところ,拡散領域再接近時には波動強度が明らかに下がっており,プラズマ波動の観点でも,無衝突リコネクションによる描像とよく合うことがわかった.これらの結果を総合的に検討したところ,大振幅電場擾乱が観測されていた場所は,これまで想定していたよりも,下流の領域に局在化された強い電流と共に現れていたことが見いだされた.このような強い電流領域は過去の数値シミュレーションでは再現されておらず,大振幅電場擾乱の成因とともに,リコネクション領域の構造の理解にとって新たな課題である.
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