研究概要 |
本研究の目的は日本の深部炭層中に存在するガスの挙動を解明しコールベッドメタンの資源ポテンシャルを明らかにすることである.我が国の始新世石炭の多くは亜瀝青炭(Ro=0.3~0.6%)に分類される.このような亜瀝青炭のコールベッドメタン資源ポテンシャルを明らかにするため,平成21年度に構築した炭層中に存在する無機・有機ガスのパルス放電ヘリウムイオン化検出器(PDHID)による同時分析法を用いて,北海道美唄地域の三美炭鉱に露出する始新世亜瀝青炭の分析を行った.その結果,粉砕にともなって遊離するガス中に水素,一酸化炭素,メタン,二酸化炭素,エチレン,エタン,プロピレン,プロパン,イソブタン,ブタンが検出され,それらの濃度は粉砕時間にほぼ比例して増加した.炭化水素中で最も多いメタンの放出量は常温常圧で約20(ml/g)であった.その炭素同位体組成からこれは熱分解起源のメタンだと判断された.熟成度の低い亜瀝青炭の場合は熱分解起源コールベッドメタンの資源ポテンシャルは小さい.さらに熟成した瀝青炭(Ro=0.6-1.6%)であれば十分な熱分解起源コールベッドメタンの資源ポテンシャルが期待される.今後は熟成度のより高い瀝青炭や無煙炭(変成炭),あるいは実験室で加熱熟成させた石炭試料について分析を行い,日本における熱分解起源コールベッドメタンの資源ポテンシャルを明らかにする.
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