研究課題
(概要) 沈み込み帯深部の脱水および融解過程は、深発地震、島弧マグマの成因に深く関わっている。三波川エクロジャイトは、マントルまで沈みこんだ海洋プートの断片考えられており、沈み込み帯深部での変成、変形過程を解析するのに最適である。しかし三波川エクロジャイトは著しい加水後退変成作用を受けており、野外露頭、岩石薄片から得られるピークの変成作用の情報は限られている。本研究では1)詳細な野外地質調査に基づく部分融解組織の記載、に成功した。そこで2)SEM-EDS,EPMAを用いた岩石薄片の記載、解析を行い、3)沈み込み帯深部の部分融解過程を解明した。21年度の成果をもに、22年度にジルコンの解析を行う予定である。(成果) 部分融解組織を示す三波川エクロジャイトの発見により、岩石記載を詳細に行った。その結果、沈み込み帯深部での含水鉱物(フェンジャイト)の分解による部分融解過程を明らかにした。(内容)1.部分融解組織の発見四国中央部三波川エクロジャイト(いらつ岩体最下部石英エクロジャイト)から露頭スケールの部分融解組織を発見した。部分融解組織部分と融解を受けていない部分を採取し、岩石スラブ、薄片を作成した。2.SEM-EDS,EPMAによる部分融解組織の解析岡本研究室に設置されている低真空SEMにSDD(シリコンドリフトディテクター)(アワーズテック社)を取り付けた。にれにより部分融解組織の観察、半定量化学分析が可能となった。早稲田大学に設置されているEPMA分析もさらに行い、部分融解組織に以下の特徴があることを明らかにした。1)ガーネットは被覆成長の組織を示している、2)ガーネット中に含水鉱物であるゾイサイト、フェンジャイトがコア部分に取り込まれている、3)ガーネットのリムに包有される鉱物はほとんどない、4)部分溶融組織が認められない岩石のマトリックスには、ゾイサイト、フェンジャイトはオンファス輝石、ガーネットと共存している。以上の特徴から以下の分解反応が推定される。フェンジャイト+オンファス輝石+石英=メルト+ガーネット(意義、重要性) 本研究は、三波川エクロジャイトが上部マントルで部分融解がフェンジャイトの分解により引き起こされたことを初めて明らかにした。これまで冷たい海洋プレートの沈み込みモデルでは、含水鉱物の脱水分解によりマントルウエッジが加水されることが強調されてきた。温かい海洋プレートの場合、角閃石の分解に伴う部分融解の重要性が高圧実験から指摘されてきたが、フェンジャイトの脱水分解に伴う部分融解の重要性が本研究で明らかとなった。(22年度の研究予定) フェンジャイトの部分融解により生じたメノシトおよびガーネットの化学組成の特定を行う。ジルコンインクルーション中のメルトの同定と共存するガーネットの分析をレーザーICPで行う。
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