研究概要 |
日本各地の海岸平野を構成する沖積層は,これまで海水準変動の影響を強く受けて形成されたものとして,層序や堆積相・堆積システムなどの検討が進められてきた.しかし,日本のような変動帯に発達する沖積層は,構造運動(活構造によるイベント性沈降運動)や火山活動に起因した過剰な土砂供給の影響など海水準変動変動以外の要因の影響を受けていることが予測される. 本研究は,新潟地域の沖積層の検討成果を活かして,構造運動や土砂供給システムの背景が異なる新潟地域の柏崎・上越(高田)地域の沖積層を対象とし,沖積層の形成に対する海水準変動以外の要因の抽出とこれを要因とした時間空間的な埋積量変化を定量的に明らかにすることを目的とした. 平成23年度は,柏崎地域と上越(高田)地域の沖積層において実施したオールコアボーリング試料や既存コア試料を用いて,平野の沖積層の基本層序,堆積環境の変遷の理解をより深めるため,全有機炭素量と全イオウ量の分析を行い,これまでの成果と合わせて平野全体の沖積層の発達過程をより詳細に明らかにした.具体的には,柏崎平野では,海進に伴い形成された浅い内湾域での海進速度の変化に対応した堆積環境の変遷(還元的な環境への変化)と海岸部での構造運動による沈降・圧密作用の量的変化を解明できた.上越(高田)地域では,15,000年前以降の沖積層の形成において,4回の火山性の大規模土砂供給イベントの内陸部から海岸部までの対比ができ,これらの土砂イベントは,平野の埋積を大きく進捗させ,堆積環境の変遷をもたらしていることが明らかとなった.また,これらの土砂イベントに対応した海水の影響変化の具体的な様相が明らかとなった.上越地域はグローバルな海水準変動を受けながらも,構造運動ではなく火山起源の土砂供給が平野形成の規制要因であることが明らかとなった.
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