研究概要 |
これまで調査研究を進めていたインド、オリッサ州タルチール堆積盆のペルム-石炭系タルチール累層の射流領域堆積物について、収集済みのデータを解析し、堆積作用とその地史的背景に関する論文を公表した。タルチール累層の扇状地-ファンデルタ堆積物中には反砂堆や反砂堆起源とみなされる内部成層構造が普遍的に観察され、射流領域の流れが堆積作用に大きく関与していたことがうかがえる。観察される反砂堆には規模や形態にいくつかの種類があり、それぞれについて流れの水理特性を推定した。タルチール累層はゴンドワナ氷床の衰退期の堆積物で、氷河の衰退の初期段階で大量の粗粒物質が供給されて湖盆縁に扇状地-ファンデルタが形成され、その過程で氷河の崩壊や山間の氷河湖の決壊が頻繁におこり、高流速かつ浅水深の大規模なシート洪水流がフラッシュ洪水として頻発し、射流領域での堆積作用が起こったと考えられる。 エジプト、ファイユーム盆地カルン湖北岸の完新世段丘層の研究では、既に得ている野外調査データの解析を行ない、ギルバート型デルタを形成して堆積したこと、トップセットには水平層理が卓越し,反砂堆起源とみなされる緩く湾曲する低角度斜交層理がしばしば観察されることが明らかとなった.トップセットにチャネル堆積物がきわめて稀で,水平層理や反砂堆起源の低角度斜交層理が普遍的に認められることから,このデルタの形成には河川の定常的な水流作用ではなく突発的なシート洪水流が深く関わっており,射流領域の流れも頻繁に発生していたと考えられる.フォーセットにも反砂堆起源の低角度斜交層理がよく見られ,そのような洪水流が水中に流入し,フォーセットを流下する時にもさほど勢いを失わなかったらしい.カルン湖の北側では後背山地が湖に近接しており,突発的な洪水流がシート状に広がって湖に流入してギルバート型デルタを形成していったと考えられる。
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