研究課題/領域番号 |
21540474
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
前島 渉 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20173700)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 射流 / 反砂堆 / 堆積構造 / 堆積作用 / 国見累層 |
研究概要 |
福井県の新第三系国見累層に関する調査研究において、扇状地堆積物中のとくに下部扇状地起源と考えられる地層に、低角度の斜交層理がよく発達することが確認された。これらの低角度斜交層理は、昨年度の水路実験によって作り出された砂床形との比較から、射流領域の流れのもとで形成された反砂堆起源の堆積構造とみなされる。反砂堆起源の低角度斜交層理には大局的に見て2つの産状がある。1つは薄層砂岩中にみられるもので、扇状地縁辺において河川流路の側方規制を解かれて緩斜面上に溢出したシート洪水流によって形成されたと考えられる。他の1つは上方細粒化を示す厚い砂岩層の上部にみられるもので、洪水期に河川流路内の砂州上に形成された反砂堆が急速な減水のために保存されたと考えられる。両者のうちシート洪水流による反砂堆は産出例が多く、射流領域のシート洪水流堆積物の地層記録への保存ポテンシャルが高いことがうかがえる。いっぽう、洪水期に砂州上に形成された反砂堆はごくまれにしか確認されない。これは河川流路内では、たとえ砂州上といえども、射流領域で形成された堆積物が洪水流の減衰過程で容易に再動され、常流のもとでの砂床形に転換してしまうためと考えられる。2つの産状の間で、反砂堆起源の低角度斜交層理の形態上の差異は現在までのところ明確に認識できていない。昨年度の実験研究では水理条件の違いによって反砂堆の形態に差ができることが確かめられており、シート洪水流と河川流路内洪水流の違いが堆積物中の反砂堆にどうのように反映されているのか明らかにする必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地層中のフラッシュ洪水による射流領域の堆積物については、その背景要因の解明がかなり進むとともに、射流領域の堆積物の的確な認定が可能となってきた。また、射流堆積作用による堆積構造に多様性があることも明らかにできた。地層から得られた情報を評価するための水路実験においても成果があがっており、地層記録に対して堆積時の水理条件や水力プロセスをかなり詳細に議論することができる段階になってきている。
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今後の研究の推進方策 |
地層中の射流領域の堆積物をさらに詳細に検討し、堆積相の細分を試みる。とくに反砂堆起源の内部層理に着目して、それらの規模や形態からタイプ分けをおこない、射流領域の流れによる堆積相のスペクトラムを確立する。また、堆積亜環境と反砂堆起源の内部層理の形態的特徴との関係を解明する。さらに、実験研究の成果を地層中の射流領域の堆積物に適用し、堆積時の水力プロセスを定量的に議論できことを目指す。
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