研究概要 |
本課題は,泥質堆積物のテフラ分析(火山ガラス屈折率測定)である.当初の計画では,濃尾平野内の地盤沈下観測井に保管されているボーリング・コアを分析する予定であった.しかし,許可の手続きに手間取ることが予想され,年度内に分析の終了が懸念されたため,研究室で保管していたコアを分析した.これは,平野東縁部(名古屋市港区大江町)で実施された掘削深度が70mのボーリング・コアで,沖積層から中部更新統の海部・弥富累層まで達している.このコアにはさまれる泥層のほとんどを分析した. その結果,詳細な地下地質が明らかになるとともに,地下地質の特徴や,従来の認識と異なる点などが判明した.とくに広域テフラのうち,鬼界アカホヤテフラ(K-Ah,約7千年前),琵琶湖底のBT36(約12万年前),阿多鳥浜テフラ(Ata-Th,約24万年前)の3層が特定され,さらに多摩TE-5テフラ(約35万年前)の1層を特定できる可能性を見出した.広域テフラの年代から,沖積層海成粘土層の上部はおよそ7千年前,海部・弥富累層の上部は約24万年前なども判明した. 本課題のテフラ分析から,興味深い成果が得られたので,「濃尾平野東縁部浅層の地下地質」(仮題)と題して論文原稿を執筆中であり,夏までには,日本地質学会の論文誌『地質学雑誌』に投稿できる運びに至っている.
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